アルミニウム合金の3Dプリント製ラジエーター:CELLSIUSによる積層造形を活用した熱交換器の再設計
CELLSIUSとスイス連邦工科大学チューリッヒ校の学生チームは、金属3Dプリント、流れ場の最適化、一体造形を通じて、水素動力の小型航空機に搭載する熱交換器の構造を見直し、放熱効率、重量、抵抗のバランス向上に取り組んでいます。
航空機のラジエーターは、単なる放熱部品ではない
この独特な形状のラジエーターを開発したのは、CELLSIUSとスイス連邦工科大学チューリッヒ校の学生チームです。チームは、自ら改造した水素動力の小型航空機に搭載する動力システムを設計しています。
航空用途において、ラジエーターは単なる付属品ではなく、重量、空気抵抗、航続距離、全体の空力性能に影響する重要な部品です。重量が1グラム増えるだけでも飛行効率に影響する可能性があるため、チームは従来のラジエーターで見過ごされがちな構造を改めて検討し始めました。
従来の分配マニホールドでは、多くの放熱面積を十分に活用できない可能性
従来の熱交換器では、フィンの密度や流路の寸法だけでなく、分配マニホールドも実際の放熱性能に直接影響します。
入口付近の流路に流量が集中し、遠方の流路に十分な流体が届かないと、流れ場に大きな偏りが生じます。この場合、多数のフィンを備えていても、伝熱面積の一部は有効に機能せず、全体の重量だけを増やすことになります。
また、不均一な流れ場は余分な圧力損失を生む可能性があり、冷却液を送るためにポンプがより多くのエネルギーを消費することになります。
3Dプリントによる一体造形:分配マニホールドと熱交換コアを直接統合
このラジエーターは、全体で手のひら2つ分ほどの大きさです。右側に密集する穴は、空気側の流路です。
部品の表面を見ると、分配マニホールドと熱交換コアには従来の溶接、ねじ止め、組み立ての痕跡がなく、金属3Dプリントによって一体で造形されていることが分かります。
一体造形のメリットは、部品点数の削減だけではありません。従来の加工や組み立て方法に制約されず、流体分配、流路、筐体、放熱構造を同時に最適化できる点が、より重要です。
分配マニホールドと熱交換コアを統合し、追加の溶接や接合の必要性を低減します。
本当に必要な箇所にだけ材料を残し、機能に寄与しない構造の重量を削減します。
従来の加工制約に縛られず、流体の要件に応じて内部構造を自由に生成できます。
放熱性能、圧力損失、重量、造形性を同時に考慮できます。
形状を描くのではなく、アルゴリズムで流れを制御する構造を生成
CELLSIUSの設計手法は、最初に固定の形状を決めてから微調整するものではありません。
チームはまず、利用可能なスペース、出入口の位置、流量、設計目標を制約条件として設定します。そのうえで設計ツールが流れ場と熱交換性能を同時に評価し、最終的な形状を段階的に生成します。
ToffeeXを選んだ理由の一つは、2つの流体間の熱交換を対象に、マルチフィジックス設計と最適化を直接行えることです。
冷却液を遠方へ導き、流量分配を改善
冷却液は左上の入口から入った後、入口に近い数列の流路へ直接流れるのではなく、まずマニホールドの底部へ導かれます。その後、底部に沿って横方向に流れ、最後に下から上へと十数本の流路に分配されます。
生物の触手のように見える分岐構造は、実際には分配マニホールドの内部へ伸びる中実の充填構造です。
これらの形状は入口付近の空間を狭めることで、従来は流量を確保しにくかった遠方の領域へ流体を導きます。同時に、従来の分配マニホールドで流体が滞留しやすい領域を埋めています。
流量の均一化と抵抗の低減により、全体の軽量化も可能に
チームによると、新設計はラジエーター内部の流速分布をより均一にすると同時に、流動抵抗と必要な冷却液の量を低減できます。
チームが引用する研究結果では、従来の分配マニホールドをこのような最適化構造に置き換えることで、ラジエーター全体の重量を約20%削減できるとされています。
その理由は、分配マニホールド自体が軽くなることだけではありません。流れ場が均一になると、より短い熱交換コアで同じ放熱量を確保できます。圧力損失の低減によって、ポンプや配管の規模、必要な冷却液の量をさらに抑えられる可能性もあります。
流れ場の改善によって有効な伝熱構造を短縮し、システムの重量をさらに削減します。
よりスムーズな流体分配により、システムの抵抗とポンプの負荷を抑えます。
必要な冷却液の量を減らすことも、航空用途でのさらなる軽量化につながります。
より多くの流路を実際の熱交換に活用し、機能しない重量になることを防ぎます。
金属3Dプリントでは製造可能性も考慮する必要がある
このような複雑な内部流路の設計は積層造形に適していますが、製造プロセスの制約を完全に無視できるわけではありません。
金属粉末床溶融結合法で内部流路を造形する際は、造形後に未溶融の粉末を確実に排出できるようにする必要があります。同時に、除去できないサポートが内部に形成されることも、できる限り避けなければなりません。
筐体の肉厚もできる限り薄くする必要がありますが、造形の安定性や構造強度を犠牲にはできません。そこで、六角形のリブ網からなるハニカム状の補強構造を使うことで、薄肉の外殻を維持しながら、内部圧力に耐えられるようにします。
なぜAlSi10Mgアルミニウム合金による3Dプリントを選ぶのか?
分配マニホールド単体の主な役割は、流体を導き、分配することです。それ自体に高い熱伝導性は必要ないため、理論上はナイロンなどの材料で製作することも可能です。
しかし、金属3Dプリントの強みを十分に生かすには、分配マニホールドと熱交換コアを単一の部品に統合する必要があります。そして、熱交換を行う領域には優れた熱伝導性が求められます。
そのため、AlSi10Mgのように金属積層造形に適したアルミニウム合金は、合理的な材料の選択肢となります。
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