柔軟性のあるフィラメントは、硬質フィラメントと同様に、これまで以上に幅広い用途で活用されています。
TPUは、その柔軟性を活かしてさまざまなクリエイティブな用途や実用的な用途に利用できます。そこで今回は、3Dプリントのアイデアを広げるためのモデルを8種類ご紹介します。

モデルをご紹介する前に、まずはTPUの特性について理解しておきましょう!
ショア硬度
柔軟性のあるフィラメントを造形する際に、特に重要なポイントの一つがショア硬度です。
ショア硬度は材料の硬さを表す指標で、圧力を加えた際にどの程度へこみに抵抗するかによって測定されます。
100%充填時の柔軟性フィラメントでは、一般的にショア硬度75A~85A程度ですが、92A~98A程度の硬度を持つ製品もあります。
数値が高いほど材料は硬くなります。柔軟性フィラメントを選ぶ際は、ショア硬度を確認して、材料の特性を把握しておきましょう。
リトラクション
柔軟性のある材料を造形する際によくある失敗の一つが、スライサーのリトラクション設定を確認しないことです。
TPUフィラメントは柔軟性があるため、フィラメントをホットエンド側へ引き戻す際に、リトラクションによる張力が発生します。
フィラメントにかかる張力によって材料が伸びたり引っ張られたりすると、フィラメント径に影響を及ぼすことがあります。その結果、ノズル詰まりにつながる可能性があります。
そのため、リトラクションを使用する必要がある場合は、設定値を低くすることをおすすめします。
造形設定の目安
使用するTPUフィラメントのメーカーが具体的な造形条件を推奨している場合は、まずその設定に従うことをおすすめします。
推奨値がない場合は、以下の数値を初期設定の目安として試してみてください。
ノズル温度:210~240℃
ベッド温度:0~60℃
造形速度:5~30 mm/s
リトラクション:通常は無効。使用する場合は20 mm/sで最大3 mm程度
冷却ファン:最初の3層程度はオフ、その後20~60%
押出機構:特に旧型の3Dプリンターでは、ダイレクトドライブ方式のエクストルーダーがより適しています
これでTPUを使った3Dプリントの基本が分かったところで、ここからはTPUで造形できる面白くて実用的なモデルをご紹介します!

ファスナー用引き手
バックパックやジャケットなどに欠かせないのが、ファスナーの引き手です。
特に寒い日に、手袋を外さずにジャケットのファスナーを開閉したいときに便利です。
多くの衣類にはファスナーの引き手が付いていますが、破損したり紛失したりすることもあります。そんなとき、このシンプルな3Dプリントモデルが便利な解決策になります。
ほとんどのバックパック用ファスナーに対応しており、積層ピッチ0.1 mmのTPUでの造形を想定して設計されています。
透明フィラメントを使用する場合は、トップレイヤーとボトムレイヤーを5層ずつ使用することをおすすめします。

スニーカー
1980年代の映画に登場するようなデザインからインスピレーションを得たこのスニーカーは、柔軟性のあるTPUと先進的なデザインを組み合わせた、ユニークなモデルです!
デザイナーは、ショア硬度82A程度のTPUを使用し、造形速度90 mm/s、インフィル密度25%での造形を推奨しています。
インフィル設定を変更することで、スニーカーの柔らかさを調整できます。設定によって異なりますが、1足の造形には約23時間かかります。
サイズは5、6、7、8、9の複数種類が用意されています。もちろん、足のサイズに合わせてモデルを拡大・縮小することも可能です。

ジョイスティックキャップ
ゲーム機でゲームをしたり、ラジコンなどのコントローラーを操作したりするのが好きなら、この3Dプリント可能なジョイスティックキャップは、コントローラーを手軽にカスタマイズできるアイテムです。
ジョイスティックのグリップ力が向上するため、操作性やエイム精度の向上にも役立ちます。
このモデルには複数のジョイスティックキャップが含まれており、それぞれ異なるデザインが用意されています。8BitDoのコントローラーに合わせて設計されています。
デザイナーは柔軟性のある材料での造形を推奨していますが、「NonFlex」という名称が付いた別のファイルも用意されており、PLAなどの一般的なフィラメントでも造形できます。

エアダスター
このエアダスターは、全体をTPUで一体成形できるように設計されています。
内部が中空になっており、本体を押しつぶすと小さなノズルから空気が噴き出す仕組みで、驚くほど効果的に使用できます。パソコンや電子機器の掃除、家の中の手が届きにくい狭い場所のホコリ取りなどに便利です。
モデル全体をTPUで造形できる設計ですが、デザイナーは底部をPETGで造形することを推奨しています。しっかりとしたベースになるため、繰り返し圧縮しても潰れにくくなります。
モデルを最適な状態で造形するための詳しい設定は、説明欄で確認できます。また、より良い結果を得るために、造形速度を落とすことも推奨されています。

飲料缶用フタ
パーティーや家族の集まりで炭酸飲料を飲むものの、一度に飲み切れないことが多いなら、TPU製の缶用フタを造形してみるのもおすすめです。
標準サイズの缶にぴったりフィットし、開封した缶の上部から炭酸が抜けるのを抑えるのに役立ちます。また、缶を誤って倒してしまった場合にも、飲料がこぼれるのを防ぐのに役立ちます。
大人から子どもまで楽しめる便利なモデルで、大人数が集まるイベントなどで配るアイテムとしてもおすすめです。
デザイナーは2種類のサイズを用意しているため、缶によりきつく、またはゆったりとフィットさせることができます。
複数の色でフタを造形すれば、誰の飲み物なのかを見分けるのにも役立ちます!

エアレスタイヤ型テニスボール
このようなエアレスタイプのボールを見たことがあるかもしれません。今回は、実際に遊べるエアレスタイプのテニスボールをご紹介します。
このボールは衝撃に耐えられるように設計されており、内部に空気を入れなくても跳ねるため、従来のテニスボールに近い感覚で使用できます。
最適なバウンド性能を得るため、ショア硬度98AのTPUを使用することが推奨されています。硬度が低い材料では、ボールの反発力が弱くなる可能性があります。
このようなエアレスタイプのボールに興味がある方は、filete3dが公開している、さまざまなスポーツ向けの他のモデルもチェックしてみてください。

一体造形できるモンキーレンチ
このモンキーレンチは、人気の「プリント・イン・プレース(Print-in-Place)」方式で設計されており、従来のモンキーレンチと同じように、回転する調整ねじと可動式のあごを備えています。
特に注目すべきなのは、TPUで造形しても実際に機能するよう設計されている点です。
いくつかのバージョンが用意されており、スライサーでサポートを生成する必要がないよう、サポート構造をモデルに組み込んだバージョンもあります。通常のサポートを使用すると、可動部が動かなくなる可能性があるためです。
一般的には非柔軟性の材料で造形されることが多いレンチですが、柔軟性のある材料でもレンチを造形できることを示す例が数多くあります。以下の動画でも確認できます。
実際、TPU特有のゴムのような質感によって、より高いグリップ力が得られる可能性があります!
このレンチを造形する際は、機構部分を正しく機能させるため、通常よりも造形速度を落とすことをおすすめします。
猫と遊ぶのは楽しい時間ですが、ペットのためにおもちゃを用意すれば、さらに楽しめます。
この3Dプリントモデルは、猫が部屋の中を追いかけて遊べるシンプルなおもちゃです。2つのリングが、曲線状のひもでつながった構造になっています。
柔軟性のある材料で造形することで、長いひも部分がしなやかに曲がりながらも、元の形状に戻るように設計されています。
モデルの製作者は、Prusa i3 MK3S+を使用してTPUでこの猫用おもちゃを造形しました。
造形時間は2時間未満で、使用した材料は約14 gでした。
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